奈良で「交換と贈与」がテーマのイベントに参加しました!

こんにちは!! ビィーゴイベントディレクターのながはらです。

「面白いイベントを企画するためには自分たちもお客さんとしてイベントに参加しなければ!」、ということで大阪を中心にさまざまなイベントや人が集まる場所に足を運んでいます。

今回は、奈良市のコワーキングスペースBONCHIで2024年5月10日(金)に開かれたイベント「LIFE PICNIC 〜「生きる」をめぐる、ぐるぐる時間〜Vol.5 交換と贈与」に参加してきました。

早速、当日の模様をレポートしたいと思います。

BONCHIってどんなところ?

会場のBONCHIは奈良市の中心部にある創業支援施設です。コワーキングスペース、レンタルスペースの他にカフェなどパブリックスペースがあります。弁護士など専門家による創業相談も受けられるそうです。近鉄奈良駅から徒歩約5分の場所で、近くには興福寺や奈良公園などの有名観光地があります。ドロップイン利用もできるので、奈良に行く機会があればぜひ訪ねてみてください。

イベント「LIFE PICNIC」とは?

イベントのホームページによると、LIFE PICNICは、「多様な価値観を知り、自分はどうありたいのか?どう生きたいのか?を考える連続企画」だそうです。

『「生きる」について考えるという壮大なテーマを掲げながらも、ピクニックのような楽しい雰囲気の中で、重さと軽さ、真剣さと楽しさ、学びと遊び、が混ざり合い、自分たちにとっての「当たり前の世界」を見直す機会にしていきたい』のだとか。

会場は、ピクニックという名前の通りアウトドアのような雰囲気。参加者はサンドイッチを食べながらお話を聞きました。

ビィーゴでも、スナックビィーゴやランチオフ会などのイベントを開催していますが、飲食付きのイベントはリラックスした雰囲気でいいですね。

ちなみに、私は第一回から毎回参加しています。講座の内容、コンセプトともに素晴らしかったので、できる限り参加させていただくことにしました。

過去のレポート記事もホームページに掲載しています。直近のもののリンクも付けていますので、興味のある方は本稿と併せてお読みください。

この日のテーマは、「交換と贈与」

このイベントはシリーズ企画で、毎回異なったテーマで行われます。今回は「交換と贈与」がテーマでした。

トークとグループワークの2部構成で、トーク部分はエッセイ作家・MCのしまだあやさん(写真左)がナビゲーターを務められています。

ゲストは教育者・哲学研究者の近内悠太さん

この日のゲストは教育者・哲学研究者の近内悠太(ちかうちゆうた)さんです。近内さんのプロフィールは以下の通りです。

近内悠太さん
教育者/哲学研究者
1985年神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、日本大学大学院文学研究科修士課程修了。専門はウィトゲンシュタイン哲学。リベラルアーツを主軸にした統合型学習塾「知窓学舎」講師。著書『世界は贈与でできている―資本主義の「すきま」を埋める倫理学』で第29回山本七平賞 奨励賞を受賞。

会場には著書販売コーナーも

会場には、近内さんの著書を紹介するコーナーもあり、「世界は贈与でできている」(News Picksパブリッシング)「利他・ケア・傷の倫理学」(晶文社)の2冊を販売していました。私は、もちろん2冊とも購入しました。

交換と贈与とは?

イベントは、そもそも「交換」「贈与」とは何なのか、言葉の定義についてのお話から始まりました。

「交換」とは、何かとの引き換えにある、対価またはサービス、値段がついている、今の社会(資本主義)の基本となるものを言います。

「贈与」とは、生きていく上で重要な、しかし、お金では買えないもの。例えば、大切な人との関係、仕事のやりがい、愛のようなものをいいます。これについて、近内さんは受け手の側が規定するものと捉えていて、受け取ったことに気付いて初めて「贈与」になります。

私たちが普段行っている行為や人間関係がどちらにあたるかは、一義的に決まるものではなく、両者のモードを使い分けしているのが現状だそうです。

例えば、親子は典型的な贈与関係にも見えるけど、(親の愛を受け取る)子供の側が「いい子にしなければ」とプレッシャーに感じてしまえば、それは交換関係になるという話です。

贈与の呪いとサンタさんというシステム

贈与は相手に知られてはいけないものだと近内さんは言います。例えば、プレゼントなども本来は見返りを期待してあげるものではないので「贈与」なのですが、受け取った相手がお返しをしなければと思うと「交換」っぽくなってしんどくなる。このことを近内さんは呪いと言う表現を使って説明されていました。だから、贈与は「後になって思い出すぐらいがちょうどいい」のだそうです。

ここで有用になるのがサンタさんというシステムです。子供がクリスマスにもらうプレゼントをサンタさんからのものだとすることで、贈与の呪いを解き放つことができます。つまり、プレゼントの本当の贈り主を知った時には、時間が相当経ってしまっているので今さらお返しをしなきゃという思いに囚われることがない(贈与は完成している)、ということです。

(以下は、当日私がトークを聞きながら考えたことです)
ただ、おそらく小学生ぐらいになれば、サンタさんの「正体」についてみんなうすうす気付いているとは思います。だから、お母さんが「言うこと聞かんとサンタさんがプレゼントくれへんようになるで」と言ったりする(笑)。ただ、そこでも、サンタさんを介することで贈与の呪いを解き放つことはできている。そこまで含めて、サンタというシステムはいいシステムだな、と思いました。

近内さんが受け取ったもの

近内さんが受け取ったものの例として挙げられていたのは、「敗戦公論」(ちくま学芸文庫)などで知られる文芸評論家加藤典洋さん(2019年没)からかけられた「文章を書いて自分が空っぽと思わないなら嘘だ」という言葉でした。「おそらく本人は覚えていないだろう」けど、文章を書いて生きていくと決めている自分へのメッセージとして受け取ったそうです。

そのほかにも、東日本大震災の経験から「都市機能は簡単に止まる。にも関わらず、今日も世界は平和に動いている。ということは、誰かがそれを維持している」ということに気付いたことなどを話されていました。

近内さんはこのように誰かからメッセージを受け取ったからにはそれをまた他の誰かに伝えること、そして、一生懸命生きることを心がけているそうです。

グループワーク〜贈与みのある写真を探せ!

トークの後は振り返りの時間。3名一組になって共通のワークをします。この日は、参加者のスマホの中にある写真の中で①贈与みのある写真を3枚選び、②その理由を探し、③引き出された物語を共有しました。ちなみに、会場のスマホ所持率は100%でした。

最初に近内さんが例として、香水・温泉・猫の写真を出されました。いずれも生存のためにいらないものだからだそうです。こんな風に、大喜利のように写真からストーリーを見つける作業をそれぞれ黙々とやっていきます。テーマを決めてから写真を撮るのも楽しいですが、その逆も楽しいですね。

私が選んだ贈与みのある3枚

私が選んだのは、①尾道デニムプロジェクトのジーンズ、②古本屋台、③自分と同じ名前の不動産屋さんの3枚です。

①尾道デニムプロジェクトのジーンズ

1枚目は私が愛用しているジーンズです。こちらは、尾道デニムプロジェクトの商品で、いろんな職業の方が仕事の際に着用したものを販売しています。私のものは、向島のラムネ屋さんが着用していたものです。ラムネのビンをケースごと持ち上げる作業の時にできたシワなどその職業ならではの色落ちがあって面白いです。

②古本屋台

2枚目は、大阪市内で開かれた屋台のイベントで撮影した古本屋台です。写っているのは、スタンダードブックストアの中川和彦さん。書店業界では有名な方で、元書店員の私にとって憧れの人です。

③自分と同じ名前の不動産屋さん

3枚目は、近鉄奈良駅前の不動産屋さん。私の下の名前が真幸(マサキ)なので、以前から何となく親近感を抱いています。

私が提示するストーリーは、贈与はバトンだというものです。ユーズドデニムや古本の売買は、一見交換のようにも思えますが、前の持ち主の思いを受け手である私が感じているので、贈与っぽいと感じます。最後の、名前については、親が未来を託して付けてくれたものなので、これも贈与です。

このように、人から人へとつながっていくのが贈与なのではないかな、と私は考えました。

そのほかにも、「自分が大切にされていると感じること」「これまでの蓄積」など、いろんな意見が出ていました。

このような形で毎回ゲストの話を自分で噛み砕いて消化する時間があるのがこのシリーズの良さだと思います。

まとめ・カジュアルでアカデミックな場

というわけで、トークとグループワークを併せて2時間半、交換と贈与について考えてきました。私自身、学生時代は哲学などアカデミックなものにどっぷりとハマっており、友人と深夜のファミレスや喫茶店で延々と議論をしたものです。

ただ、大学を卒業してからは、一人で本を読んだり、著者の話を聞いたりすることはあっても、議論や意見交換をする場は極端に少なくなりました。そういう意味では、この「LIFE PICNIC」シリーズは私にとって貴重な場を与えてくれる存在です。

こうしたアカデミックなイベントがカジュアルな形で、しかも、コワーキングスペースで行われていることが素晴らしいと思います。

今回も、ゲストの近内さん、しまださんやBONCHIの皆さん、参加者の皆さんからのメッセージを受け取りました。誰に、どういう形でかは決めてませんが、受け取ったバトンを次の方につなげていきたいと思っています。ひとまずは、近内さんの本をじっくりと読むところから始めてみます。

「LIFE PICNIC」は、今後も続く予定です。次回は2024年7月に開催される予定ですが、内容はまだ公表されていません。興味がある方は、BONCHIのHPをご覧ください。


以上、奈良で開かれた「LIFE PICNIC 〜「生きる」をめぐる、ぐるぐる時間〜Vol.5 交換と贈与」のレポートでした!

今後の予定について

今後も、関西エリアを中心にいろんなイベントに参加し、そこで学んだことを日々の企画に活かしていきたいと思います。不定期でレポート記事も掲載しますのでお楽しみに!

この記事を書いた人
まさやん
ビィーゴのイベントディレクター兼写真部長です。大阪市生まれ枚方市育ち。地元を拠点に、全国各地のローカル&ソーシャルな活動に関わるべく、いろいろ動いています。趣味は、鉄道旅・読書・スポーツ観戦(特にラグビーが好き)。