ゆうき内科スポーツ内科の管理栄養士 山本尚代さんに聞く「相手がどうなりたいかを大切にする」とは【ビィーゴ会員様インタビュー】

コワーキングスペースビィーゴの利用者さまに焦点を当て、その人のこれまでの人生や将来の展望についてお伺いするビィーゴオリジナルインタビュー企画「あの人に聴いた!働くってなんですか?」

第11回目のゲストは山本尚代さんです。山本さんは、枚方ビオルネ4階にある「ゆうき内科・スポーツ内科」でスポーツ栄養相談を担当し、これまで多くのアスリートやスポーツ愛好家、学生の皆さんを栄養面からサポートしてこられました。
大学卒業と同時に管理栄養士の国家資格を取得された山本さんですが、管理栄養士としてスポーツ栄養の分野で仕事に就くことの難しさに直面されたそうです。

山本さんの今までの人生、またこれからの人生について、現役大学生のビィーゴスタッフきだが聞いてきました。

プロフィール

山本尚代(管理栄養士)

大学卒業とともに管理栄養士の国家資格を取得。病院やBリーグのバスケットボールチームの食堂で管理栄養士として勤務経験があり、現在は枚方ビオルネ4階の「ゆうき内科・スポーツ内科」でスポーツ栄養相談を担当している。

<インタビュアー>:きだ(ビィーゴアルバイトスタッフ/大学生)

1.管理栄養士ってどんな仕事?

きだ

さっそくですが、今どんなお仕事をされているのかを含めて自己紹介をお願いします。

山本さん

枚方ビオルネの「ゆうき内科・スポーツ内科」の管理栄養士として働いています。

スポーツ選手や一般の方などの栄養管理、栄養相談がメインの仕事です。個人でも管理栄養士としてお仕事を頂いています。

ゆうき内科は一般内科も併設しているので、生活習慣病の方の栄養相談も行っています。

きだ

ゆうき内科さんでは例えば学生で部活動をしている方やプロアスリートもいらっしゃるのですか?

山本さん

学生さんも来られますね。ゆうき内科が関わらせていただいた方でオリンピックに出場された方もいらっしゃいます。

きだ

すごい!

山本さん

ゆうき内科に来ていただいたら、日本選手団のお皿なんかも展示しています。

きだ

そのようなアスリートの方々はもともと枚方に住んでいらっしゃった方ですか?それとも、日本各地からゆうき内科さんに来られているんですか?

山本さん

ゆうき内科には近畿圏の選手が来院しております。
私が行っている栄養相談に関してはオンラインでもできるので、地域問わず全国の方をサポートさせてもらっています!

きだ

オンラインならではのサポート方法ですね!

2.スポーツ栄養の分野で働くまで

きだ

山本さんが今のお仕事にたどり着くまでの経緯を教えてください。

山本さん

大学卒業のタイミングで、管理栄養士の国家試験に合格しました。

「スポーツ栄養」というものは、管理栄養士の中でもやりたくても仕事にならない、繋がらなくて断念する人が多い分野なんです。

普通の新卒のように就職先があるわけではないですし、実際にスポーツ栄養の現場で働かれている方はフリーランスが多いので、私も悩んでいました。

きだ

そうなんですか。とても厳しい世界なんですね…

山本さん

管理栄養士としては病院に勤めていた経験が大切になってきます。なので、まずは病院で管理栄養士として働き始めました。

きだ

やはり実績が大切になるんですね。

山本さん

病院で働きながらもスポーツ栄養の現場で働きたいという気持ちはあったので、大阪のバスケットボールチームのチーム食堂の管理栄養士にも就くようになって、そこでメニューを作ったり、調理をしたりしていました。

きだ

そこからスポーツとも関わってこられたんですね。

山本さん

それ以外にスポーツ栄養の勉強をしていく中で、偶然ゆうき内科とご縁があって、週に一回程度栄養相談の担当として働き始めました。

きだ

すごいご縁ですね!

山本さん

そうしていく中で、院長がもっとスポーツ栄養を広めていきたいということだったので、ゆうき内科で働く頻度を高くしていきました。コロナ禍でバスケチームのチーム食堂も閉店してしまったので、今は食堂では働いていません。

個人では、ジュニアチームやプロ・実業団の選手の栄養サポートや、ご紹介でいただいた栄養セミナーの講演のお仕事をしています。

きだ

スポーツ栄養士と管理栄養士というのは全く違うものなんですか?

山本さん

少し難しい話なんですけど。

私は管理栄養士の国家資格を持っていて、名札にもスポーツ栄養士って記載しているんですけど、この「スポーツ栄養士」ってこういう名称があるわけではなくて、スポーツの現場で働いている栄養士ということなんです。

きだ

資格として存在はしていないということですか?

山本さん

はい。公認スポーツ栄養士というのは資格としてちゃんと存在するんですが、スポーツ現場で働かれているような栄養士の方々がみんなこれを持っているかと言われたらそうではないんです。

さらに言うと、管理栄養士でなく栄養士、その他スポーツ栄養系の民間資格者の方も現場で活躍していたりします。

きだ

たくさんの呼び方や種類があるんですね。

山本さん

資格がないからといってだめなわけではなくて、知識や経験が豊富な方々もたくさんいらっしゃいます。

きだ

資格の有無が必ずしも実績に繋がるわけでもないんですね。

山本さん

そうですね。管理栄養士は国家資格で、解剖学、臨床、公衆栄養、給食管理など幅広く学んだ上でのアプローチができるので、選手を任せる一つの目安になるのではと思います。

3.スポーツ栄養に携わるきっかけ

きだ

今までで人生のターニングポイントはいつでしたか?

山本さん

大阪北部地震の時はまだ病院で働いていたんです。

そこの病院は好きだったのですが、食堂が地下にあって、朝一番で準備をしていた時に大阪北部地震が発生したんです。

誰もいない広い空間に閉じ込められるのかな、こんな所で死ねない!と思って、もう一度スポーツ栄養を頑張ろうと思えるきっかけになりました。

きだ

すごい地震でした。思わぬきっかけがあったんですね!

山本さん

そこから病院で働きながらも、スポーツ栄養の方に歩みよっていきました。

4.「相手がどうなりたいのか」を大切に

きだ

お仕事をする上で大切にしていることはありますか?

山本さん

「相手がどうしたいか」というのを大事にしています。栄養管理って今の食事を否定されるんじゃないかって考える人も多いんですけど、そうではないんです。

その人がどうなりたいか、その人のためにできることを一緒に考えて併走していくようなイメージです。

例えばアスリートだったら自己ベストを出したいとか、大会で優勝したいだとか。

きだ

あくまでも、相談に来られた方の目線で、栄養サポートをされているんですね。

山本さん

例えば生活習慣病の減量でも「痩せるためにはこうしなければいけませんよ」ではなくて、「痩せた先にその人の5年10年後の自由度が増える。本人がそれを望むのであれば、並走しますよ」という考え方なんです。

きだ

スポーツ栄養って例えばアスリートの方の試合直前の食事だけではなくて、毎日の食事も管理されるのですか?

山本さん

それぞれ困っていることが変わってくるので選手にもよります。

例えば、増量・減量になってくると日々の食事をサポートしていくんですけど、直前の食事のサポートもします。

最近では、サポートした方がハーフマラソンに出場するので、遠征先での食事を管理していました。

その人が何を求めているのかを考えて、柔軟に対応しています。

5.栄養の見直しから人生が変わる

きだ

嬉しかったことや大変だったことなど、印象に残っている出来事はありますか?

山本さん

その人の目標の達成や、悩んでいることを改善するために並走するので、それが実現した時には本当に嬉しいですね。

きだ

やりがいがとてもありそうです!

山本さん

スポーツ内科では無月経や摂食障害の方も来院されます。摂食障害は精神科での診察がメインにはなります。ですが、「栄養士さんについてもらっている」ということ自体がご本人の安心材料になるようです。

食が変われば、人生が変わると思うんです。なので、このように変わっていく経過を見られることは嬉しいです。

きだ

確かに、生き方が変わってきますね。

山本さん

選手は日々結果を求められて、すごいプレッシャーの中で競技に取り組まれています。なので、その都度のシーズンでうまくいかなかったら競技を辞めることを考えている方もいらっしゃるんです。

一回目の面談では悲壮感漂うような暗い印象だった方が、栄養サポートを通して県代表や日本代表に選ばれるまでに改善していく姿を見ていると、自分が担当させていただいた価値があったのかなと、嬉しく思います。

山本さん

大変だったことは、いっぱいあります。

きだ

1人1人となると、今何人くらいサポートしていらっしゃるんですか?

山本さん

どれくらいかは言えないんですけど…
単発の栄養面談などもあるので、正確に何人というのは難しいんです。

増量・減量となると、こまめに食事や体重を管理していかないといけないので、結構労力を使います。個人個人によって使う労力や時間はかなり変わっていきますね。

きだ

単発と毎日ではかなり仕事量が変わりそうですね。

山本さん

そうですね。選手個人個人にあったサポートができるように心がけています。

選手は栄養以外でもやることが多いので、「負担にならない」ことも重要だと思っております。

きだ

スポーツの怪我ってどちらかと言えば外科や整形外科的なもの、例えば疲労骨折が多いイメージなんですけど、このような怪我も栄養や日々食べているもので変わってくるのでしょうか。

山本さん

疲労骨折は食事や栄養が大きく関わってきますね。

きだ

そうなんですね!

山本さん

「スポーツ傷害」と「スポーツ外傷」でも違ってきます。

スポーツ外傷は、スポーツ実施中にどこかにぶつけたりしてできた傷のことなんですけど、スポーツ傷害、特に疲労骨折はエネルギー・栄養不足が大きく関与します。

日々のコンディショニング、疲労回復をしっかりしていけばカバーできるものです。この二つの違いもあると思います。

6.目標ややりたいことがあるなら、やるしかない

きだ

就職活動やこれからについて悩んでいる方にメッセージをお願いします。

山本さん

目標に向かって日々努力している選手といて思うことは、目標ややりたいことがあること自体が素晴らしいということです。

目標があるならやるしかないんじゃないのかなって思います。こういう目標を発信していたら周りが支援してくれると思うので、本当にやりたいことがあるのであればぜひ声に出してほしいです。

もし管理栄養士や、栄養について興味があるのであればいつでもお声がけいただければと思います

きだ

山本さんは大学でスポーツ内科やスポーツ栄養を学ばれていたんですか?

山本さん

いえ、スポーツ栄養は研究も兼ねて携われていただきましたが、「スポーツ内科」と接点を持ったのは社会人になってからです。

というのも、スポーツ内科って管理栄養士さんでも知らない人が多く、まだまだ知られていない分野です。当院に片道4時間掛けてくる人もいるくらい全国的にも数が少ないんですよ。

きだ

4時間かけてこられる方がいらっしゃるんですか!

山本さん

スポーツ関係者でも知らない人が多いそうです。

7.今後の展望

きだ

山本さんの今後の展望について教えてください。

山本さん

スポーツ内科には、貧血や摂食障害、疲労骨折などマイナスな状態から来院される選手がほとんどです。まずはそのような選手たちが自分の最大限の力を発揮できるような可能性を広げていきたいです。

山本さん

まだまだスポーツ栄養は当たり前のように皆さんが知っているものではないんです。

スポーツにおける体の不調で悩んでいる方に対して、少しでもスポーツ栄養が解決方法の選択肢に入ってくれたらいいと思います。無理にやる必要はなくて、やるかやらないか選択肢に入る段階になってくれればいいなと思っています。

きだ

確かに、多くの方に知ってもらいたいですよね。

山本さん

指導者さんが悪いわけではないですが、指導によってその選手の将来が悪い方向に変わってしまう時があります。練習と食事のミスマッチが起きれば選手の体は壊れていきますので、そのようなことはなくしていきたいです。

きだ

指導者さんに対してもスポーツ栄養やスポーツ内科の存在を知ってもらうのが大切になってきそうです。

8.ビィーゴ大学について

きだ

今後、ビィーゴ大学ではどのようなことをお話されますか?

山本さん

お仕事で睡眠時間を削っている方も多いと思うんですけど、それが本当に効率的なのか、考えてもらえる機会にしたいと思っています。

ショートスリーパーのお話もあると思うんですけど、実際にはごく一部と言われています。

どうすれば自分の力を最大限にいかせるのか、体調管理もお仕事の一部だと思うので、改めて考えてもらえるようなお話しにしたいと思っています。

きだ

睡眠の重要性が再確認できそうです!

山本さん

スポーツでもコンディショニングはすごく大切なので、そういう所からお話しできることはたくさんあるのかなと思っています。

興味を持っていただけたら、ぜひ聞いていただきたいです!

9.ビィーゴは「集中できて、時には休める場所」

きだ

最後に、「私にとってビィーゴは〇〇ができる場所」ということで、山本さんにとってビィーゴはどんな場所ですか?

山本さん

集中して作業ができる場所です。

休憩場所としても利用しているので、休める場所でもあります。

きだ

利用用途に合わせて使い分けられているんですね!

山本尚代さんプロフィール

プロフィール

山本尚代(管理栄養士)

大学卒業とともに管理栄養士の国家資格を取得。病院やBリーグのバスケットボールチームの食堂で管理栄養士として勤務経験があり、現在は枚方ビオルネ4階の「ゆうき内科・スポーツ内科」でスポーツ栄養相談を担当している。

編集後記

今回のインタビューで、初めてスポーツ栄養がどのようなものなのか、その現場で働く最前線の情報を知ることができました。

「相手がどうなりたいかを大切に」
私もこれまでスポーツに関わってきましたが、選手自身がどうなりたいかで指導してくださる方は少なかったように思います。スポーツ栄養の分野はまだあまり知られていないかもしれませんが、これからスポーツ分野で重要になってくるのではないかと感じました。これからも注目していきたいと思います。

山本さん、素敵なお話をありがとうございました。


この記事を書いた人
きだ